「銀行に融資を断られた」「ビジネスローンの審査が通らない」「でも来月の支払いは待ってくれない」
こうした状況に追い込まれている建設会社や運送会社の経営者は少なくありません。
取引先からの入金は2〜3ヶ月先なのに、従業員の給与、燃料代、外注費、リース料は毎月確実にやってくる。
この入金と出金のタイミングのズレが、慢性的な資金不足を生み出しています。
銀行融資を申し込んでも、決算内容や業績を理由に断られることが増えています。
ビジネスローンは金利が高く、そもそも審査に通らないケースも多いのが現実です。
不動産があれば担保に入れられますが、不動産を持たない会社にとっては使える手段が限られてきます。
しかし、あなたの会社には「車両」という資産があるはずです。
トラック、ダンプ、重機、クレーン車など、日々の業務に欠かせない車両は、同時に数百万円から数千万円の価値を持つ資産でもあります。
この資産を活用した「車両リースバック」という資金調達方法が、銀行やローンに頼れない会社の新たな選択肢として広がっています。
本記事では、車両リースバックの仕組みから活用方法、注意点までを詳しく解説します。
資金調達の壁にぶつかっている経営者の方に、新たな道筋を示す内容となっています。
銀行融資・ビジネスローンが使えない会社が直面する資金調達の現実
建設業や運送業を営む会社が資金調達を考えるとき、まず頭に浮かぶのは銀行融資でしょう。
しかし現実には、銀行融資のハードルは年々高くなっています。
特にコロナ禍でゼロゼロ融資を利用した会社は、追加融資が難しくなっているケースが目立ちます。
すでに借入残高が膨らんでいる状態では、新たな融資を受けることは容易ではありません。
また、赤字決算が続いている会社や、債務超過に陥っている会社は、そもそも審査のテーブルにすら乗らないことがあります。
銀行は返済能力を重視するため、業績が悪化している会社への融資には慎重にならざるを得ないのです。
ビジネスローンという選択肢もありますが、これも万能ではありません。
銀行融資よりも審査は通りやすいとはいえ、税金の滞納があったり、複数社から借入があったりすると審査に落ちることがあります。
さらに、ビジネスローンは金利が高く設定されていることが多いため、利用できたとしても返済負担が重くなります。
不動産担保ローンという手段もありますが、そもそも不動産を保有していない会社には使えません。
運送会社や建設会社の場合、事務所や倉庫は賃貸というケースも多く、担保に入れられる資産がないという状況は珍しくありません。
このように、従来型の資金調達手段が次々と閉ざされていく中で、経営者は別の方法を模索する必要に迫られています。
そこで注目されているのが、会社が保有する車両を活用した資金調達方法なのです。
車両リースバックとは?銀行に頼らず自社資産を現金化する仕組み
車両リースバックとは、自社で保有しているトラックや建設機械をリース会社に売却し、その後は同じ車両をリース契約で借りて使い続けるという仕組みです。
分かりやすく言えば、車両の「所有者」は変わりますが、「使用者」はそのまま自社という状態を維持できます。
この方法の最大の特徴は、業務を止めることなく資金調達ができるという点です。
通常、資産を売却して資金を得ようとすると、その資産は使えなくなってしまいます。
しかしリースバックであれば、売却後もリース料を支払うことで同じ車両を継続して利用できるため、現場への影響がありません。
具体的な流れを説明します。
まず、保有している車両の査定を依頼します。
車種、年式、走行距離、車両の状態などをもとに買取価格が算出されます。
その価格に納得できれば売買契約を結び、同時にリース契約も締結します。
売却代金は一括で受け取ることができ、以降は毎月定額のリース料を支払っていく形になります。
銀行融資やビジネスローンとの大きな違いは、審査基準にあります。
融資の場合は会社の決算内容や業績が重視されますが、車両リースバックでは車両自体の価値が重視されます。
そのため、赤字決算であっても、税金の滞納があっても、車両に価値があれば利用できる可能性があるのです。
これは従来の資金調達が難しくなっている会社にとって、大きな意味を持ちます。
車両リースバックを選ぶメリット|融資との違いを経営視点で比較
車両リースバックには、銀行融資やビジネスローンにはないメリットがいくつかあります。
経営判断の材料として、それぞれを具体的に見ていきましょう。
まず、資金調達のスピードが挙げられます。
銀行融資の場合、申し込みから実行まで数週間から1ヶ月以上かかることが一般的です。
書類の準備、審査、契約手続きと、多くのステップを踏む必要があるためです。
一方、車両リースバックは査定から入金まで数日から2週間程度で完了するケースが多く、急な資金需要にも対応しやすいという特徴があります。
次に、審査基準の違いです。
前述の通り、融資では会社の財務状況が重視されますが、車両リースバックでは車両の価値が判断基準の中心となります。
これにより、業績不振で融資を断られた会社でも資金調達の道が開ける可能性があります。
また、借入ではないという点も重要です。
車両リースバックはあくまで売却とリース契約の組み合わせであり、借入金として計上されません。
そのため、すでに借入が多い会社でも利用しやすく、信用情報への影響も融資とは異なります。
さらに、バランスシートへの影響もあります。
車両を売却することで資産が減少し、財務体質のスリム化につながる場合があります。
リース料は経費として処理できるため、会計上の扱いも変わってきます。
ただし、これらのメリットはデメリットと表裏一体の部分もあります。
メリットだけを見て判断するのではなく、総合的に検討することが重要です。
車両リースバックを利用する際のデメリットと注意すべきポイント
車両リースバックは有効な資金調達手段ですが、利用にあたっては注意すべき点やデメリットも存在します。
これらを理解せずに契約すると、後悔につながる可能性があるため、しっかり確認しておきましょう。
まず、車両の所有権がなくなるという点を理解しておく必要があります。
売却後は車両の所有者がリース会社に移るため、自社資産からは外れることになります。
将来的な会社売却や資産評価において、保有資産が減少していることが影響する場面があるかもしれません。
次に、長期的なコスト面での注意です。
リースバックでは売却代金を受け取る代わりに、リース期間中は毎月リース料を支払い続けます。
リース期間全体で支払う総額は、売却で得た資金を上回ることが一般的です。
つまり、短期的な資金繰りの改善と引き換えに、長期的にはコストが増えるという側面があります。
途中解約についても注意が必要です。
リース契約を途中で解約する場合、違約金が発生するケースがほとんどです。
事業規模の変更や車両の入れ替えを予定している場合は、契約期間と解約条件を事前に確認しておくことが重要です。
また、すべての車両が対象になるわけではありません。
極端に年式が古い車両、走行距離が多すぎる車両、状態が悪い車両などは、買取価格が低くなったり、対象外となったりすることがあります。
契約内容の細部にも目を通しましょう。
リース期間中の修理費用、保険料の負担、走行距離制限など、契約によって条件は異なります。
契約書の内容を十分に確認してから判断することが大切です。
車両リースバックを成功させるための経営判断と活用のコツ
車両リースバックを資金調達の手段として効果的に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
まず実践すべきなのは、複数のリース会社から見積もりを取ることです。
車両の査定額やリース料の設定は会社によって異なります。
1社だけの見積もりで決めてしまうと、より有利な条件を逃してしまう可能性があります。
少なくとも2〜3社に相談し、条件を比較検討することをおすすめします。
次に重要なのは、資金使途を明確にしておくことです。
リースバックで得た資金を何に使い、どのように会社の状況を改善していくのかを具体的に計画しましょう。
単なる一時しのぎではなく、その資金を使って売上を伸ばしたり、コストを削減したりといった前向きな活用を考えることが成功への鍵です。
リース期間の設定も慎重に検討すべきポイントです。
期間が短いとリース料の月額負担が重くなり、長いと総支払額が増えます。
自社のキャッシュフローを考慮しながら、無理のない返済計画を立てられる期間を選びましょう。
活用場面として多いのは、季節変動への対応です。
建設業や運送業は繁忙期と閑散期の差が大きく、閑散期に資金が不足しがちです。
繁忙期に向けた準備や、閑散期を乗り越えるための運転資金として活用するケースが見られます。
また、急な大型案件を受注した際の資金調達にも有効です。
銀行融資を待っていては間に合わない場面で、スピーディーに資金を確保できる点は大きな強みです。
車両リースバックは、経営改善の一環として戦略的に位置づけることで、その効果を最大限に発揮できます。