2026年現在、建設・運送業界を取りまく経営環境は、資材高騰や人手不足の影響により一層厳しさを増しています。特に「2024年問題」を経た物流業界では、車両維持費の増大と収益性の確保という板挟みに苦しむ経営者も少なくありません。「銀行に融資を申し込んでも、赤字決算を理由に断られた」「税金の滞納があり、ビジネスローンも通らない」といった状況では、目の前の現場を回すための運転資金すら危うくなることがあります。
しかし、諦めるのはまだ早いです。自社の駐車場に並んでいるトラックや重機こそが、その危機を救う「最強の資産」になる可能性があります。本記事では、銀行融資とは全く異なるロジックで1,000万円超の資金を調達できる「車両リースバック」について、その実力と活用法を徹底解説します。
1. 車両リースバックの仕組み:資産を現金化しつつ現場を稼働し続ける知恵
車両リースバックとは、自社で所有しているトラックや重機などをリース会社に一度売却し、同時にその車両をリース契約(賃貸借契約)として結び直す手法です 。最大の特徴は、法的な所有権はリース会社に移転するものの、車検証上の「使用者」は変わらず、これまで通り現場で使い続けられる点にあります 。これにより、売却代金としてまとまった現金を一括で受領しながら、現場の足を止めることなく業務を継続することが可能になります 。
この取引は「売買」と「リース」の二階建て構造で成り立っています。
- 売却フェーズ:保有車両を時価または帳簿価額で売却し、一括で現金を受け取ります 。
- リースフェーズ:毎月のリース料を支払うことで、同じ車両を継続利用します 。
運送業や建設業において、車両は「稼ぐための道具」です。リースバックはこの道具を手放すことなく、その中に眠っている含み資産を「今すぐ動かせる現金」へと変換する、極めて実戦的な財務戦略です 。銀行融資のような「負債」を増やす形ではなく、資産の構成を固定資産から流動資産(現金)へ変えることで資金を作るため、対外的な財務イメージを損なわない点も大きな魅力と言えるでしょう 。
2. 赤字・債務超過でも1,000万円超。銀行融資と異なる「担保価値」の評価
「3期連続赤字だから」「債務超過だから」と、銀行から追加融資を断られた経験はないでしょうか。一般的な融資審査では企業の信用力(スコアリング)が重視されますが、リースバックは企業の財務状況よりも、車両そのものの「資産価値(担保価値)」を重視して判断されます 。そのため、銀行融資が厳しい状況下でも、価値のある車両を保有していれば1,000万円を超えるような高額調達が実現するケースも珍しくありません 。
具体的に対象となる車両は、運送・建設現場で使われる多種多様なものが含まれます。
- 一般貨物車両:2t、4t、大型トラック(アルミウィング、バンなど) 。
- 建設・土木車両:ダンプ、ミキサー車、クレーン車、セルフローダー 。
- 特殊車両:パッカー車、高所作業車、トラクタヘッド 。
実際に、3期連続赤字の運送会社が大型トラック5台をリースバックし、2,000万円の資金を確保した事例も報告されています 。また、ローンが残っている車両であっても、売却代金で残債を精算し、余剰分を手元資金に充てることが可能な場合もあります 。税金の滞納や債務整理中のような、通常の金融機関では「NO」と言われる状況であっても、車両という実物資産があれば資金調達の道は開かれているのです 。
3. 現場の稼働はそのまま。車検証の「使用者」が変わらない実務的メリット
中小企業の社長が最も懸念するのは、「資金調達のために現場の稼働が止まること」や「取引先に資金繰りの悪化を察知されること」ではないでしょうか。リースバックは、車両の売却後も現場からトラックや重機を引き揚げる必要が一切ありません 。導入前と全く変わらない状態で業務を継続できるため、ドライバーのモチベーションを下げたり、荷主や元請け企業に不安を与えたりする心配もありません 。
実務面では、契約形態によってさらなるメリットを享受できます。
- メンテナンスリース:車検、点検、故障修理の手配をリース会社に一任でき、突発的な支出を抑えてコストを平準化できます 。
- ファイナンスリース:車両代金や税金などの立替が主となり、自由度の高い管理が可能です 。
「所有」にこだわると、車両の老朽化に伴う維持費の増大や、不意の故障が直接経営を圧迫します。リースバックによって「利用」に切り替えることは、煩雑な車両管理業務から解放され、社長が本業である「受注と現場の采配」に集中できる環境を整えることにも繋がります 。また、車検証上の使用者欄が維持されるため、対外的な登録手続きの手間が最小限で済むのも、忙しい現場を抱える経営者にとって大きな利点です 。
4. 財務体質の健全化と節税効果。オフバランス化が導く経営改善の道
リースバックは単なる現金確保の手段にとどまらず、企業の財務体質を根本から改善する「攻めの財務戦略」としての側面を持ちます。車両をバランスシートから除外する「オフバランス化」を行うことで、総資産が圧縮され、経営効率を示す指標が向上します 。特に注目すべきは、総資産利益率(ROA)の改善です 。
車両を売却し、分母である「総資産」を減らすことで、利益が同じであっても計算上のROAは上昇します 。これは、将来的に再び銀行からプロパー融資を受けたいと考えた際、収益性の高い企業として評価されるための重要な準備となります 。また、毎月のリース料は原則として「全額経費」として処理できるため、節税効果も期待できます 。
さらに、2027年以降に予定されている新リース会計基準の変更も考慮すべき点です。新基準ではリースのオンバランス化が原則となりますが、「1契約300万円以下の少額リース」については引き続きオフバランス処理が可能となる見込みです 。中古車両のリースバックであれば、1台あたりの契約額をこの範囲に抑えやすく、新制度下でも財務上のメリットを享受し続けられる可能性が高いです 。このように、短期的な資金繰りだけでなく、中長期的な財務戦略としてもリースバックは非常に有効な選択肢となります。
5. 契約終了後の選択肢と注意点。将来の事業計画に合わせた賢い「出口」
リースバックを活用する上で理解しておくべきは、リース期間終了後の「出口」です。一般的に2年から5年程度のリース期間が終了した際、経営者はその時の状況に合わせて3つの選択肢から最適な道を選ぶことができます 。
- 車両の買い戻し:設定された価格で車両を再び自社所有に戻します。愛着のある車両や、まだ十分に稼働できる車両に適しています 。
- 再リース:リース期間を延長し、より安価な再リース料で継続して車両を利用します 。
- 車両の返却:リース会社に車両を返し、最新車両への入れ替えや、事業規模の縮小に合わせた整理を行います 。
一方で、注意点も存在します。リース契約は原則として中途解約ができず、全損事故などで解約せざるを得ない場合は違約金(残リース料相当)が発生するリスクがあります 。また、長期的に使い続ける前提であれば、自己所有よりも総支払額が高くなるのが一般的です 。
しかし、リースバックの本質は「コスト削減」ではなく、今ある資産を「機動的な資金」に変え、倒産リスクを回避したり、新たな受注機会を逃さないための「投資」にあります 。資金繰りに悩む現状を突破し、次のステージへ進むためのステップとして、自社の車両価値を再評価してみる価値は十分にあります。まずは、保有している車両がいくらで現金化できるか、専門の窓口で概算の査定を受けてみることから始めてはいかがでしょうか 。