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建設ファクタリングの基礎知識:手数料相場・契約形態・法的留意点を実務目線で整理

建設ファクタリングの基礎知識:手数料相場・契約形態・法的留意点を実務目線で整理

「また資材費の支払いが先か…」

「大きな工事を受注できたのは嬉しいが、入金は数ヶ月先。それまでの運転資金をどうしようか…」

建設業を営む経営者様であれば、このような資金繰りの悩みに常に直面していることでしょう。

受注から入金までの期間が長く、一方で人件費や資材費、外注費などの支払いは待ってくれない。この業界特有のキャッシュフロー構造は、たとえ順調に事業が拡大していても、常に資金ショートのリスクをはらんでいます。

銀行融資を申し込んでも、審査に時間がかかったり、そもそも赤字決算や税金の滞納を理由に断られたりすることも少なくありません。

そんな八方塞がりの状況で、新たな選択肢として注目されているのが建設ファクタリングです。

これは、完成した工事の請求書(売掛債権)を専門の会社に買い取ってもらうことで、入金日を待たずに最短即日で現金化できる資金調達手法です。

この記事では、建設ファクタリングの利用を検討する際に必ず知っておくべき基礎知識について、手数料の相場から契約形態の違い、法的な注意点まで、実務に即した視点で徹底的に整理していきます。


建設請求書の適格性チェック:注文書・出来高報告・検収書の整備ポイント

建設ファクタリングを利用する際、最も重要なのが「買い取ってもらう請求書(売掛債権)の信頼性」です。

ファクタリング会社は、その請求書が間違いなく発注者から支払われるものであるかを厳しく審査します。

そのためには、請求書一枚だけではなく、その請求内容が正当であることを裏付ける一連の証拠書類が不可欠となります。

まず、基本となるのが注文書や工事請負契約書です。

誰が、誰に、どのような工事を、いくらで発注したのかを明確に示す根幹の書類であり、これがなければ始まりません。口約束での受注は、こうした場面で致命的な弱点となります。

次に、工事の進捗を示す出来高報告書や作業報告書が重要になります。

特に工事の途中で発生する出来高払いの請求書を資金化したい場合、契約通りに工事が進んでいることを客観的に証明する資料として機能します。

そして、最も決定的な価値を持つのが、発注者による検収書です。

発注者が工事内容を確認し、その請求額の支払いを承認したことを示すこの書類は、売掛債権の存在を証明する最強の証拠となります。検収印や担当者の署名があることで、債権の確実性が格段に高まり、審査がスムーズに進むだけでなく、より有利な条件での買い取りが期待できるのです。

これらの書類が日頃から適切に管理・整備されているかどうかが、いざという時の資金調達のスピードと成否を分けると言っても過言ではありません。


2社間/3社間の違いと手数料相場:債権譲渡登記・通知要否・スピードの比較

建設ファクタリングには、主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」という2つの契約形態があり、どちらを選ぶかによって手数料や手続きの流れが大きく異なります。自社の状況に合った方式を理解し、選択することが極めて重要です。

2社間ファクタリングは、利用者であるあなたとファクタリング会社の2社間だけで契約が完結する方法です。

最大のメリットは、発注者(売掛先)に通知する必要がないため、ファクタリングの利用を知られずに資金調達ができる点です。これにより、今後の取引関係への影響を心配する必要がありません。また、手続きがシンプルなため、最短即日で現金化できるスピード感も魅力です。

ただし、ファクタリング会社にとっては債権の未回収リスクが高くなるため、手数料は高くなる傾向にあり、相場は一般的に8%〜20%程度です。

一方、3社間ファクタリングは、あなた、ファクタリング会社、そして発注者の3社間で手続きを進めます。

発注者に対して債権を譲渡した旨を通知し、承諾を得る必要があります。この手続きにより、ファクタリング会社は発注者から直接支払いを受けられるため、未回収リスクが大幅に低減します。その結果、手数料は1%〜9%程度と安く抑えられるのが最大のメリットです。

しかし、発注者の承諾が必要なため、資金化までに時間がかかること、そしてファクタリングの利用が発注者に伝わってしまうことがデメリットとなります。

緊急性や秘匿性を重視するなら2社間、コストを少しでも抑えたい、かつ発注者の理解が得られる状況であれば3社間、という判断基準を持つとよいでしょう。


下請法・債権譲渡禁止特約の注意点:契約書で見落としやすい条項と回避策

建設ファクタリングの契約を進める前に、法的な観点、特に「下請法」と契約書内の「債権譲渡禁止特約」について正しく理解しておく必要があります。これらを見落とすと、予期せぬトラブルに発展しかねません。

まず、建設業者が下請けの立場にある場合、下請法が適用される可能性があります。

この法律は、親事業者(発注者)に対し、下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めることなどを義務付けています。もし、この支払期日を守らない、不当に減額するといった行為があれば、それはそもそも違法な取引であり、ファクタリングを検討する以前の問題として親事業者に是正を求めるべきです。

次に、多くの工事請負契約書に記載されているのが債権譲渡禁止特約です。

「この契約から生じる権利義務を第三者に譲渡してはならない」といった条項がこれにあたります。かつてはこの特約があるとファクタリングの利用は困難でしたが、2020年4月に施行された改正民法により、譲渡禁止特約が付いている債権であっても、その譲渡は原則として有効となりました。つまり、法律上は特約があってもファクタリングは可能です。

しかし、注意したいのは、あくまで「法律上は有効」という点です。

特約に違反して債権を譲渡したこと自体が契約違反と見なされ、発注者との信頼関係が悪化したり、今後の取引に影響が出たりするリスクは残ります。

このリスクを回避する最も確実な方法は、発注者から事前に譲渡の承諾を得る(3社間ファクタリング)ことですが、それが難しい場合は、発注者に知られずに手続きが完了する2社間ファクタリングを選択するのが現実的な解決策となるでしょう。


事例で学ぶ資金化スキーム:出来高払い・前払金・連帯債務の扱い

建設業界の代金支払いは多様であり、その形態によってファクタリングの利用方法も異なります。具体的なスキームを理解することで、より効果的に資金繰りを改善できます。

最もファクタリングと相性が良いのが、工事の進捗に応じて支払われる出来高払いのケースです。

例えば、総工費5,000万円の工事で、40%が完了し、発注者の検収も済んだ2,000万円分の請求書があるとします。この請求書をファクタリングで現金化すれば、最終的な工事完成を待つことなく、次の工程に必要な資材の購入費や人件費を即座に確保できます。これにより、資金不足による工期の遅延といった最悪の事態を回避できるのです。

一方で、注意が必要なのが**前払金(着手金)**の扱いです。

契約時に受け取る前払金は、まだ役務を提供していない段階で受け取るお金、つまり会計上の「前受金」であり、労働の対価として確定した「売掛債権」ではありません。したがって、前払金そのものをファクタリングの対象とすることはできません。 ファクタリングできるのは、あくまで役務の提供が完了し、発注者の検収を経て金額が確定した請求書のみです。

また、複数の企業が共同で事業を行うJV(共同企業体)などの連帯債務が絡む案件では、権利関係が複雑になりがちです。

自社の担当工事部分に関する請求書であっても、他の構成員の同意が必要になるなど、手続きが煩雑になるため、一般的なファクタリング会社では取り扱いを断られるケースもあります。こうした特殊な案件は、建設業界に特化した、専門知識の豊富なファクタリング会社に相談することが不可欠です。


審査を通す書類準備リスト:請求書、工事契約、入出金履歴、反社確認、課税区分

ファクタリングの審査をスムーズに進め、一日でも早く資金を調達するためには、事前の書類準備が全てを決めると言っても過言ではありません。

ファクタリング会社が審査で確認するのは、主に「売掛債権が本物で、間違いなく支払われるか」そして「取引全体が健全であるか」という2点です。その証明のために、以下の書類をあらかじめ整理・準備しておくことを強く推奨します。

1. 債権の存在と内容を証明する書類

  • 請求書(写し): 基本中の基本です。請求先の会社名、請求日、請求金額、支払期日が明確に記載されているものを用意します。
  • 工事請負契約書、注文書・注文請書: その請求が発生した根拠となる契約書類です。工事の内容、請負金額、支払条件(締め日・支払日)などが明記されている部分が特に重要となります。
  • 検収書、納品書、完了報告書など: (あれば提出)発注者が工事の完了や納品を承認したことを示す書類です。これがあることで債権の確実性が格段に高まり、審査において非常に有利な材料となります。

2. 取引の健全性と継続性を証明する書類

  • 入出金履歴(通帳のコピーやインターネットバンキングの取引履歴): 請求先である発注者と、過去に安定的・継続的な取引があったことを証明するために提出します。直近3ヶ月から半年分程度を求められるのが一般的です。期日通りに入金されている実績を示すことで、今回の請求書に対する信頼性も向上します。
  • 会社の存在と代表者を確認する書類:
    • 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書): 会社の正式な情報を証明します。
    • 代表者の身分証明書(運転免許証など): 契約者が代表者本人であることを確認します。

3. コンプライアンス・その他

  • 決算書・確定申告書: (主に2社間ファクタリングで求められる)会社の経営状況を確認するための書類です。赤字決算だからといって即座に審査に落ちるわけではありませんが、事業の実態を確認するために必要となります。
  • 納税証明書: 税金の滞納状況を確認するために求められることがあります。
  • 反社会的勢力ではないことの表明・確認: これは書類として提出するというより、契約時の必須項目となります。

これらの書類を事前にPDFなどのデータ形式で準備しておけば、複数のファクタリング会社に相見積もりを取る際にも迅速に対応でき、問い合わせから資金化までの時間を大幅に短縮することが可能です。