ガソリン価格は下がったけれど…運送業界の本音
高市早苗総理大臣の政策により、街中のガソリンスタンドでは150円台の価格表示を見かけるようになりました。ガソリン税の軽減措置は、物流を支える運送業界を助けることが大きな目的の一つだったはずです。
しかし、実際に運送業の現場で働く人々から「急に楽になった」という声は聞こえてきません。今回ご紹介するのは、兵庫県で大型冷蔵冷凍車を複数台所有し、大手食品メーカーへの配送を手がける運送会社の事例です。
売上4億円から2億円へ―何が起きたのか
この会社は大手食品メーカーとの取引があり、冷凍食品などの配送を安定的に請け負っていました。仕事量自体は比較的安定していたものの、以下の要因が重なり、売上は最盛期の4億円から2億円へと半減してしまいました。
燃料費の高騰は深刻な問題でした。2024年問題以前から続く燃料価格の上昇により、同じ仕事をしても以前よりコストがかかるようになりました。利益はどんどん圧縮されていきます。
2024年問題による稼働制限も大きな打撃となりました。ドライバーの労働時間規制により、以前はフル稼働で回せていた便数が減少。時間的な制約が収入減に直結しました。
ドライバー確保の困難さも見逃せません。運送業界では50代が「若手」と呼ばれるほど高齢化が進んでいます。60代、70代のドライバーが現役で活躍している状況で、人材確保のためのコストは上昇する一方です。
燃料費軽減策の効果は限定的
運送会社の多くは、協同組合に加入してETCカードや燃料を共同購入することで、少しでもコストを抑える工夫をしています。この会社も同様の対策を講じていました。
しかし、これらは高市政権以前から行われていた取り組みです。ガソリン価格が下がったとはいえ、それが運送業界の経営を劇的に改善するほどの効果をもたらしているわけではありません。
資金繰りの専門家によれば、「高市政権になってから大幅に楽になった」という声は、少なくとも現時点では聞いていないとのこと。燃料費だけでなく、人件費の上昇や2024年問題による稼働制限など、複合的な要因が運送業界を苦しめています。
リース満期の連続到来という新たな危機
この会社が直面していたのは、トラックのリース契約が次々と満期を迎えるという問題でした。
リース契約には「残価」が設定されています。契約満了時に車両を買い取る場合、この残価分を支払わなければなりません。しかし、売上が半減し資金繰りが厳しい状況では、その現金を用意することができません。
通常であれば、同じリース会社で「再リース」を組むことで対応できます。ところが、この会社は業績悪化を理由に再リースを断られてしまいました。リース会社から提示された選択肢は「現金で買い取るか、車両を返却するか」の二択。事業の根幹を支える車両を手放すわけにはいきません。
紹介からの電話相談でスタート
この相談は、既存の提携先からの紹介で始まりました。社長自身もドライバーとして現場に出ているため、なかなか時間が取れません。50歳手前という年齢は、この業界では「若手から中堅」に位置します。
相談は運転中の電話で行われました。Zoomでの面談ではなく、シンプルな電話でのヒアリング。忙しい現場の社長にとって、これが最も現実的なコミュニケーション手段だったのです。
別のリース会社での再リースを模索
相談を受けた専門家は、まず現在利用中のリース契約の詳細な資料を揃えることを依頼しました。リース残価がいくら残っているのか、車両の状態はどうか、これらの情報を基に、元のリース会社ではなく別の提携リース会社での再リースが可能かどうかを審査していく方針となりました。
一つの金融機関やリース会社に断られても、別のルートが開ける可能性があります。これが資金繰り支援の専門家に相談するメリットの一つです。
運送業界が抱える構造的な問題
この事例は、一企業の問題にとどまりません。運送業界全体が抱える構造的な課題を浮き彫りにしています。
「どんな商品でも、最後に運送費が来るから一番カツカツに働かされる」という言葉が印象的です。製造業者、卸売業者、小売業者と商流が続く中で、物流コストは常に「削減対象」として見られがちです。しかし、燃料費も人件費も上がり続ける中で、そのしわ寄せは限界に達しつつあります。
政策としてガソリン価格を下げることは一つの施策ですが、2024年問題による稼働制限、慢性的なドライバー不足、そして物流費を安く抑えようとする商慣習など、複合的な問題に対処しなければ、運送業界の苦境は続くでしょう。
まとめ:危機は複合的にやってくる
今回の事例から見えてくるのは、企業の危機は一つの要因だけでなく、複数の問題が重なって訪れるということです。
売上の減少、コストの上昇、そしてリース満期という資金需要。これらが同時に押し寄せたとき、従来の取引先だけでは解決できないことがあります。
「いい時も悪い時も企業にはある」という言葉の通り、経営環境は常に変化します。重要なのは、苦しい時に相談できる専門家やネットワークを持っておくこと。一つのドアが閉まっても、別のドアを開ける方法を知っている人に頼ることが、危機を乗り越える鍵となります。