コロナ禍の後遺症が招いた税金滞納の危機
コロナ禍で多くの企業が国の支援策を活用しました。しかし、その「つなぎ資金」は事業が停滞している間の延命措置に過ぎず、売上が回復しないまま返済期限を迎える企業が続出しています。
今回ご紹介するのは、まさにそうした状況に陥った運送会社の事例です。この会社は、過去の会計処理における問題(個人と法人の会計が混在するなど)が後から発覚し、法人税が大幅に増加。結果として数千万円規模の税金を分割で支払う状況に追い込まれていました。
「お宅が潰れようが知らない」という税務署の姿勢
コロナ禍では税金の支払い猶予制度も活用できましたが、その時期は過ぎ去りました。現在、税務署は滞納企業に対して容赦のない姿勢で臨んでいます。
この会社の社長によれば、税務署の担当者からは「会社が潰れようがこちらには関係ない」という趣旨の対応をされたとのこと。事業を継続するために資金が必要だと訴えても、そうした事情は考慮されません。滞納している税金を払うことだけを求められる状況でした。
銀行融資という選択肢が閉ざされた理由
この会社は銀行から約2億円の借入れがありましたが、すでにリスケ(返済条件の変更)を実施中。元金返済を止めて利息のみの支払いに切り替えている状態でした。
ここで重要なのは、税金を滞納していると銀行からの新規融資がほぼ不可能になるという点です。なぜなら、万が一会社が倒産した場合、税金は他の債権よりも優先的に回収されます。銀行にとって、税金滞納企業への融資はリスクが高すぎるのです。
つまり、この会社は銀行からの追加融資という道が完全に閉ざされていました。
活路を開いた「車両リースバック」という手法
資金調達の方法を模索する中で、この会社が目をつけたのが所有している車両でした。運送会社として、ユニック車(クレーン付きトラック)やトレーラーなど計5台の車両を保有していたのです。
しかし、これらの車両は現在も稼働中であり、単純に売却するわけにはいきません。事業の根幹を支える資産だからです。
そこで選択したのが「リースバック」という手法でした。リースバックとは、所有している資産を売却すると同時に、その資産をリース契約で借り戻す仕組みです。これにより、車両を使い続けながら、まとまった資金を調達することが可能になります。
約1ヶ月で1,000万円を調達
手続きには約1ヶ月を要しましたが、最終的にこの会社は車両リースバックによって約1,000万円の資金調達に成功しました。
この資金によって滞納していた税金を一括で支払い、税務署との関係を正常化。その後は新たな分割払いの計画を立て、事業を継続しながら残りの税金を支払っていく道筋がつきました。
社長いわく、「滞納分を払えたことで精神的にまったく変わった」とのこと。税務署からの圧力が軽減されたことで、本来の事業運営に集中できる環境を取り戻したのです。
税金滞納は資金繰り相談の「常連テーマ」
資金繰りの専門家によれば、税金滞納の問題は相談案件の中で非常に多いテーマだそうです。毎月の運転資金(材料費や人件費など)の補填が必要なケースもあれば、今回のように溜まった税金を一気に支払うための資金調達が必要なケースもあります。
ただし、専門家がサポートできるのは「資金を作る」部分までです。その資金をどのように税務署と交渉しながら支払っていくかは、税理士など別の専門家の領域となります。
まとめ:追い詰められる前に手を打つ
今回の事例から学べるのは以下の点です。
税金滞納が発生すると銀行融資の道が閉ざされるため、問題が深刻化する前に対処することが重要です。また、事業用資産のリースバックは、資産を手放さずに資金調達できる有効な手段となり得ます。そして、税務署は猶予期間が終われば容赦なく取り立てに来るという現実を直視する必要があります。
資金繰りに困ったとき、「どこからも借りられない」と諦める前に、保有資産を活用した調達方法を検討してみてはいかがでしょうか。