「来月の支払いが厳しい」「銀行融資は審査に時間がかかる」「でも現場は止められない」
建設業や運送業を営む経営者の方なら、こうした資金繰りの悩みを一度は経験されたことがあるのではないでしょうか。
特に近年は燃料費の高騰や人件費の上昇、取引先からの入金サイクルの長期化など、キャッシュフローを圧迫する要因が増え続けています。
ビジネスローンを検討しても審査が通らない、不動産担保もない、そんな状況で資金調達の選択肢がないと感じている方も多いかもしれません。
しかし、実はあなたの会社が保有しているトラックや建設機械が、運転資金に変わる可能性があることをご存知でしょうか。
それが「トラックリースバック」という資金調達方法です。
この仕組みを使えば、今まで通りトラックを使い続けながら、まとまった資金を手にすることができます。
本記事では、資金繰りに悩む建設業・運送業の経営者の方に向けて、トラックリースバックの仕組みから活用法、注意点までを詳しく解説します。
現場の足を止めることなく資金調達を実現する、新たな選択肢として参考にしていただければ幸いです。
トラックリースバックとは何か?仕組みと基本を分かりやすく解説
トラックリースバックとは、自社で所有しているトラックや建設機械をリース会社に売却し、その後は同じ車両をリース契約で借りて使い続けるという資金調達の手法です。
つまり、車両の「所有権」は手放しますが、「使用権」はそのまま維持できるということになります。
この仕組みの最大の特徴は、現場の業務を一切止める必要がないという点です。
通常、資産を売却して資金を得ようとすると、その資産は使えなくなってしまいます。
しかしリースバックであれば、売却後もリース料を支払うことで同じトラックを継続して利用できるため、営業活動への影響がありません。
具体的な流れとしては、まず保有しているトラックの査定を受け、買取価格が提示されます。
その価格に納得すれば売買契約を締結し、同時にリース契約を結びます。
売却代金は一括で受け取ることができ、以降は毎月定額のリース料を支払っていく形になります。
対象となる車両は、大型トラックから中型・小型トラック、さらにはダンプやミキサー車、クレーン車といった特殊車両まで幅広く対応しているケースが多いです。
車両の年式や走行距離、状態によって買取価格は変動しますが、ローン残債がある車両でも対応可能な場合があります。
また、銀行融資やビジネスローンとは異なり、決算書の内容や業績よりも車両自体の価値が重視される傾向があるため、赤字決算や税金の滞納があっても利用できる可能性があります。
なぜ今トラックリースバックが注目されているのか?背景にある経営課題
トラックリースバックが建設業や運送業の経営者の間で注目を集めている背景には、業界特有の資金繰りの難しさがあります。
まず挙げられるのが、入金サイクルの長さです。
建設業では工事完了後に請求を行い、実際に入金されるまで2〜3ヶ月かかることも珍しくありません。
運送業でも同様に、荷主からの支払いサイトが長く設定されているケースが多く、売上が立っていても手元に現金がないという状況が慢性的に発生しやすい構造になっています。
一方で、支出は待ってくれません。
従業員の給与、燃料代、車両の維持費、リース料、保険料など、毎月確実に発生する固定費は容赦なくキャッシュを減らしていきます。
特にここ数年は燃料価格の高騰が経営を直撃しており、利益率が大きく圧迫されている会社も少なくないでしょう。
さらに、銀行融資やビジネスローンのハードルが上がっていることも大きな要因です。
コロナ禍で借入を増やした結果、追加融資が難しくなっている会社や、業績悪化により審査が通らなくなっている会社が増えています。
不動産を持っていれば担保として活用できますが、不動産を持たない運送会社や建設会社にとっては、担保に入れられる資産が限られているのが現実です。
そこで改めて価値を見直されているのが、会社が保有するトラックや重機といった「動産」なのです。
これらは日々の事業に欠かせない資産であると同時に、数百万円から数千万円の価値を持つ資産でもあります。
この眠っている価値を資金化できるリースバックは、資金調達の新たな選択肢として広がりを見せています。
トラックリースバックを活用するメリットと具体的な効果
トラックリースバックを活用することで得られるメリットは、単に資金が調達できるということだけではありません。
経営面でいくつかの具体的な効果が期待できます。
まず最大のメリットは、事業を止めずに資金調達ができるという点です。
トラックを手放して資金を得る場合、その車両は使えなくなってしまいます。
しかしリースバックであれば、売却後も同じ車両を使い続けられるため、取引先への配送や現場への移動に支障が出ることはありません。
従業員も同じ車両に乗り続けられるので、業務フローを変更する必要もないのです。
次に、資金調達のスピードが速いというメリットがあります。
銀行融資では申し込みから実行まで数週間から数ヶ月かかることがありますが、リースバックの場合は査定から入金まで数日から2週間程度で完了するケースが一般的です。
急な資金需要にも対応しやすい点は、資金繰りに悩む経営者にとって大きな安心材料となります。
また、バランスシートのスリム化という財務上の効果もあります。
車両を売却することで資産が減り、それに伴って減価償却の計算も不要になります。
リース料は経費として処理できるため、税務上のメリットを感じる場合もあるでしょう。
さらに、車両の維持管理の負担が軽減される可能性があります。
リース契約の内容によっては、車検や整備の手配がリース会社側で行われる場合もあり、管理の手間を減らせることがあります。
ただし、これは契約内容によって異なりますので、事前に確認が必要です。
加えて、借入ではないため信用情報への影響がないという点も見逃せません。
融資を断られた経験がある会社でも、車両の価値があれば利用できる可能性があるのは大きなポイントです。
トラックリースバックを利用する際の注意点とデメリット
トラックリースバックには多くのメリットがありますが、利用を検討する際には注意すべき点やデメリットも理解しておく必要があります。
安易に契約すると後悔することにもなりかねませんので、事前にしっかり確認しましょう。
まず理解しておくべきなのは、車両の所有権がなくなるという点です。
売却後はリース会社が車両の所有者となるため、自社の資産ではなくなります。
将来的に会社を売却する際や、金融機関への資産状況の報告において、資産が減少していることが影響する可能性があります。
次に、長期的なコストについても考慮が必要です。
リース料を支払い続けることになるため、リース期間全体で支払う総額は、売却で得た資金を上回ることが一般的です。
短期的な資金調達としては有効ですが、長期的な視点ではコストが増える可能性があることを理解しておきましょう。
また、リース契約の途中解約には違約金が発生するケースがほとんどです。
事業規模の縮小や車両の入れ替えを検討している場合は、契約期間と解約条件を事前に確認しておくことが重要です。
さらに、すべての車両が対象になるわけではありません。
年式が古すぎる車両や、走行距離が極端に多い車両、事故歴がある車両などは、査定額が低くなったり、そもそも買取対象外となったりすることがあります。
リース会社によって対応できる車種や条件が異なるため、複数の会社に相談してみることをおすすめします。
契約内容の細かい部分にも注意が必要です。
リース期間中の修理費用や保険料の負担、車両の使用条件など、契約書に記載されている内容をしっかり確認してから契約することが大切です。
トラックリースバックを成功させるためのポイントと活用事例
トラックリースバックを資金調達の手段として最大限に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
まず大切なのは、複数のリース会社から見積もりを取ることです。
車両の査定額やリース料の設定は会社によって異なります。
1社だけで決めてしまうと、より良い条件を見逃してしまう可能性があります。
最低でも2〜3社に相談し、条件を比較検討することをおすすめします。
次に、資金使途を明確にしておくことが成功のカギとなります。
リースバックで得た資金を何に使うのか、どのように返済原資を確保していくのかを事前に計画しておくことで、無駄な出費を防ぎ、資金を有効活用できます。
一時的な資金繰りの改善だけでなく、新規取引の獲得や設備投資など、将来の売上につながる使い方を検討しましょう。
また、リース期間の設定も重要です。
短すぎるとリース料の月額負担が重くなり、長すぎると総支払額が膨らみます。
自社のキャッシュフローを考慮しながら、無理のない期間を設定することが大切です。
活用事例として多いのは、季節変動のある事業での運転資金確保です。
建設業では繁忙期と閑散期の差が大きく、閑散期に資金が不足しがちです。
繁忙期に向けた準備資金や、閑散期を乗り切るための運転資金としてリースバックを活用するケースがあります。
また、急な大型案件の受注時に、人員増強や資材調達のための資金として活用する例もあります。
銀行融資を待っていては間に合わない場面で、スピーディーに資金を調達できるリースバックは有効な選択肢となります。
重要なのは、リースバックを一時しのぎの手段ではなく、経営改善の一環として戦略的に活用することです。